初心者のための番付講座
番付とは?
番付表
ここでは「知っているようで知らない大相撲の「番付」の世界をご紹介いたします!
番付表は真ん中から右が「東方」左が「西方」というように東西に分けられ編成されています。
そして最上段の右から「横綱」「大関」「関脇」と並び順を追って下に向け記入されていきます。
力士たちは全員この「番付」と呼ばれるランキング表に自分の地位を格付けされ、一つでも上に上がれるように日々稽古に励んでいるのです。
どんなに強い力士でも序ノ口から翌場所いきなり横綱にはなれません。
各段で優秀な成績を収め、一つづつ順番に昇進していかなくてはなりません。
番付とは前の場所で良い成績を収めるとランキングが上がり成績が悪ければ落ちてしまう。国籍、出身地や年齢に関係なく、結果を残したものだけが出世できるとても単純で公平な制度なのです。
番付の序列
力士達は日本相撲協会が各場所前に行う「新弟子検査」(注1)と言うものを受け合格すると、まずは「前相撲」(注2)というランクで相撲を取ります。
成績の良いものから順に出世して翌場所から晴れて「序ノ口」として相撲を取る事が出来ます。
番付に載ることが出来るのは序ノ口からですので、前相撲の新弟子はまだ「おすもうさん」では無いのでしょうね。
まずは前相撲で出世披露を受け、「力士」として認めてもらわなくてはなりません。
新弟子で「付け出し資格」(注3)を持たないものは全員この「前相撲」からスタートいたします!
「新序出世披露」 前相撲で出世した新弟子は部屋の師匠や兄弟子から化粧まわしを借りてお客様にお披露目をさせてもらいます!
力士の序列
横綱 | 幕内 | 関取 | |
大関 | 三役 | ||
関脇 | |||
小結 | |||
前頭(平幕) | |||
十両 | |||
幕下 | 力士養成員 | ||
三段目 | |||
序二段 | |||
序ノ口 | |||
前相撲 | 番付外 |
序ノ口
序ノ口の取組の様子
序ノ口は番付表の一番下、虫眼鏡で見ないと見えないくらい小さな文字で書かれています。
まだまだ半人前の人達や物事の始まりの事を「序ノ口」と呼ぶのは、この相撲の「序ノ口」から来ているのでしょうね。
この序ノ口~幕下までは全15日間で7番の相撲を取ります。
本場所では朝8時30分頃から取組が組まれる為、砂かぶりやマス席には空席が目立つ、とても静かな状態で相撲を取ります。
序ノ口力士は特に定員が決まっていない為、人数は場所によってまちまちです。ただ、この地位でケガとかによる全休をしてしまうと番付から名前が消え、再び前相撲からのやり直しになってしまいます。
ただ勝ち越せば(7番中4勝すれば)ほぼ間違い無く次の地位である「序二段」に昇進できます。
横綱までの長~い道のりのスタート地点ですね。
序二段
各段で優勝した力士は千秋楽にそれぞれ表彰されます!
番付表の下から2段目に表記されることから「序二段」と呼ばれるようになったそうです。
この地位も序ノ口同様、定員が決まっていません。ただ序ノ口で勝ち越した力士はほぼ全員序二段に上がってきますので力士の数が多い時にはこの序二段の地位が無限に増えていってしまいます。
若貴ブームの時代だった1990年代には東西200枚目を超える(400名以上)力士を数えていた時期もありました。
大相撲では幕内以外でも各段で優勝を争います。
各日同じ勝敗の力士同士を対戦させ優勝を争うのですが、この序二段は人数が多いため1回でも負けてしまうとほぼ優勝は出来ません。
7戦全勝した上、千秋楽に全勝同士で優勝決定戦を行いそこで勝って初めて優勝を手にすることが出来るため、序二段で優勝するのは至難の業となっております。
また序二段の取組は普段は早朝である為客席もまばらで静かですが、優勝決定戦は千秋楽の十両の取組後に行われる為、満員のお客さんの中行われます。力士にとってこの序二段で優勝することはとても難しく貴重な体験になりますね。
三段目
力士の場所入り 地位によって服装が違います!
番付表の上から三段目に記載されていることから「三段目」と呼ばれるようになったそうです。
定員は東西100人づつ、合計200人となっています。
序ノ口、序二段から三段目に上がると普段身に着ける衣服にも違いがあり、入門する力士たちはまずこの三段目に上がって「雪駄を履く」事を目標にするそうです。
その反面、三段目にもなると力士達の体格も良くなり技術も向上することから取組もかなり激しくなり、とても見応えが出てきます。
この三段目を通過して次の幕下の地位に昇進するには更なる技術や肉体、運動能力の向上が求められ、その壁に跳ね返され序二段に陥落する力士が毎場所多数いることも事実です。
本当の意味で「プロ力士」になる為の登竜門と言える地位でしょうかね!
各段番付の差
衣服/序列 | 関取 | 幕下 | 三段目 | 序二段/序ノ口 |
着物 | 【幕内】染め抜き着物(夏)羽織袴(冬) 【十両】羽織袴 |
浴衣(夏) 着物(冬) |
浴衣(夏) 着物(冬) |
浴衣(夏) 着物(冬) |
帯 | 博多帯 | 博多帯 | ポリエステル | ポリエステル |
羽織 | 〇 | 〇 | 一部公式の場のみ〇 | × |
袴 | 〇 | × | × | × |
履物 | 畳みの雪駄 | エナメルの雪駄 | エナメルの雪駄 | 下駄 |
履物 | 足袋 | 足袋 | 足袋 | 裸足 |
外套(コート) | 〇 | 〇 | × | × |
マフラー | 〇 | 〇 | × | × |
傘 | 番傘 | 番傘 | ビニール | ビニール |
髪型 | 大銀杏 | ちょんまげ | ちょんまげ | ちょんまげ |
まわし | 絹の締め込み | 木綿 | 木綿 | 木綿 |
さがり | ふのりで固めたもの | ふのり無し | ふのり無し | ふのり無し |
給料 | 月給 | 場所手当 | 場所手当 | 場所手当 |
部屋 | 個室 | 大部屋 | 大部屋 | 大部屋 |
本場所の取組数 | 15 | 7 | 7 | 7 |
付け人 | 〇 | × | × | × |
明け荷 | 〇 | × | × | × |
幕下
喜びの昇進会見!
昔、十両という地位が無かった時代、幕内のすぐ下に位置していた為「幕下」と呼ばれたのが始まりです。
さあ!関取まであと一歩!力士養成員としては最後の地位です!
定員は東西60人ずつ、合計120人。
しかしこの地位は当然三段目で優秀な成績を上げた猛者たちが上がって来てますし、幕下上位には上から陥落してきた元関取はゴロゴロいるし、養成員の地位ではありますが十両と遜色ない顔ぶれや実力者が揃っていますので、そう簡単に通過は出来ません!
しかもこの地位は十両以上の「関取」の地位を争う位置ですので、十両の下位の力士と俗に言う「入れ替え戦」と呼ばれる取組が組まれたりもして最も競争の激しい地位と言っても過言ではありません。
その熾烈な戦いを勝ち抜くと晴れて「新十両」として関取の地位を手にすることが出来ます!
十両14枚目と幕下筆頭では、たった一枚の番付の差ではありますが、その待遇は天と地程の差があります。
ベテラン力士が幕下陥落を機に引退する事が多いのはその為なのでしょうね。
新十両に昇進すると決まって師匠とともに喜びの昇進会見を開きます。本名で相撲を取っていた力士はこれを機にしこ名を改める事もよくあります。
全ての力士がここに来ることを夢見て、つらい稽古にも耐え日々精進するのだそうです。
十両
十両土俵入り
江戸時代、この地位は元々存在せず、お給料をもらっていた幕下上位10枚目までが後の地位に発展していきました。
その為現在でも正式名称を「十枚目」と呼んでいます。
昔、この地位の力士が貰っていたお給料が十両だった為、現在通称として「十両」と呼ぶようになったそうです。
定員は東西14名づつ合計28名。
この地位以上の力士を「関取」と呼び、力士として「一人前」と認められ、番付表の文字もグッと大きく書かれるようになります。
待遇面も幕下以下とは雲泥の差で、月々の給料の支給から付け人、個室、身に着ける衣服まであらゆる面で優遇されるようになります。
そして何よりもちょんまげからあこがれの「大銀杏」を結えるのもこの十両からとなっています。
またNHKの地上波では十両から放送され、単独でのテレビ番組への出演も認められる為、全国的に知名度もグンと上がります。
十両になると、後援会や母校などから化粧まわしを贈呈されます。十両からはその化粧まわしを締め取組前に土俵入りを披露します。
色んな部分で別世界に足を踏み入れることが出来ますが横綱への道はまだまだ続きます!
幕内
幕内最高優勝は全ての力士、相撲部屋の夢であります!
大相撲の6つの段位の中の最高峰!それが「幕内」であります!
番付表にも最上段にとても大きく書かれるようになります。定員は42名。
幕内力士ともなれば人気、実力を兼ね備えた花形力士と言えるでしょう。懸賞幕が出るのも幕内からです。
この42人の力士達で幕内最高優勝を争います。優勝すると天皇賜杯と優勝旗を授与され、さらに優勝額が贈呈されて、5年余りにわたって国技館に掲額されます。
幕内力士42人で優勝を争う訳ですが、実際には幕内上位と下位でざっくり分け取組が組まれていきます。
まれに下位の力士の健闘で優勝を争ってしまう場合があると後半の取組が優勝争いに影響されることもありますが、それも相撲を見る楽しみの一つですよね。
そして番付をあげて上位に上がればやっと横綱や大関と対戦が出来るようになります。
小結
千秋楽に行われる三役そろい踏み!
幕内の上位の力士はさらに地位が分けられ上から「横綱」「大関」「関脇」「小結」と呼ばれています。
また大関、関脇、小結を「三役」と呼んでいます。小結は上から見て4番目の位置、三役の中では一番下の地位となります。
この地位は江戸時代初期からあり、定員は特に定めはありませんが東西に必ず一人づつはいなくてはなりません。
三役となり、当然横綱大関との対戦もあり、優勝を期待させられる地位である反面、負け越してしまえば必ず平幕力士へと戻されてしまいます。
この地位は一場所で最低勝ち越し、10勝前後を求められる地位であると言えるでしょう。
関脇
新関脇に昇進した時の御嶽海。嬉しそうですね!
関脇とは三役の中では第2位、横綱から数えて3位の地位です。
小結同様、江戸初期からある地位で東西に必ず1人づつは置かなくてはなりません。「大関の脇を務める」というのが語源だそうです。
基本的には小結を経験して関脇に上がるのが順序ですが、まれに番付の編成上の理由から小結を飛び越していきなり関脇になる新三役も過去にはいたそうです。
さあ!関脇まで上り詰めた力士は上を見れば後は横綱大関しかありません。大関になる挑戦権を得た地位と言えるでしょう。
これまでも番付最高位が関脇だった力士の中にも名力士はたくさん出ていて当然優勝候補には名前が上がります。
そして本場所は「関脇が元気だと場所が面白くなる!」とよく言われ、横綱大関を苦しめる一番手に必ず上げられますね!
名古屋や大阪の場所はよく「荒れる場所」と言われる所以は関脇の活躍が必須条件なのでしょうね。
この関脇の地位で3場所の間に33勝することが大関昇進の目安とされていますが、昇進規定には明記されていないらしく、その時期によって以外に曖昧だったりするそうです。
31勝で昇進しちゃったり、33勝しても昇進できなかったり、直近さん場所が「平幕、小結、関脇」というように三役を三場所務めていなかったりとか。。。
しかしながらこの33勝というのは裏を返せば大関になった暁には「一場所最低11勝は出来るでしょう!」という太鼓判をもらうという意味では?と解釈すれば何となく納得できるような気がします!
大関
南海の黒豹の異名で人気を博した大関若島津!
大関とは三役の中では第1位、横綱から数えて2位の地位です。
江戸初期からある地位で本来「三役(力士)」とは「大関・関脇・小結」を指し、大関は三役の最上位でありましたが、その後横綱が最高の地位として確立してから現在に至っては上から2番目の地位となっています。
また、同じ三役でも関脇、小結とは特権がかなり開きがあるのでここの線引きはとても大きいそうです。
番付には東西に必ず1人づつは置かなくてはなりません。
しかし昇格や降格が現在は厳格になっている為、大関資格を持つ力士が1人以下になってしまう事もあり、その場合は横綱が大関も兼ねるという事で「横綱大関」という形をとったりもするそうです。
横綱は不在になっても大丈夫ですが、大関は必ず東西に最低1人づつはいなくてはならないそうです。
とうとう大関にまで上り詰めれば相撲界の中でも第一人者ですね!名実ともに相撲界のトップの地位と言えるでしょう。
その分、大関として、内外から求められるものはとても大きくなります。常に優勝争いを演じなくてはなりません。
本場所では最低11勝。優勝か準優勝を収める成績を求められてしまいます。
またギリギリ勝ち越したり9勝6敗の成績が目立ったりすると「96(くんろく)大関」なんていう風に言われちゃったりしますので大関を張るのも大変ですよね!
それくらい期待が大きい分成績が振るわない場合はその地位も剥奪されてしまったりもします。2場所連続で負け越すと大関から陥落してしまうのです。
そのプレッシャーに打ち勝ち、残す番付は頂点の横綱のみとなります!
2場所連続優勝もしくはそれに準ずる成績で横綱に推挙され晴れて相撲界の頂点、最上位である横綱になることが出来るのです!
横綱
ウルフと呼ばれた小さな大横綱!千代の富士!
横綱とは相撲界の頂点!番付最上位の地位です。
江戸時代元々大関が最上位として君臨していましたが、その大関の中でも実力者の腰に「綱」を巻き、一人で土俵入りすることを許可させたのが始まりで、のちに番付上も地位として確立していったそうです。
一度横綱に上がったものはその地位から陥落することは無く、引退のみがその地位から降りる手段となっています。
また横綱は、天下無双であるという意味を込めて「日下開山」(ひのしたかいさん)と呼ばれることもあります。
その地位は全ての力士の憧れであり、最高の栄誉である事はもちろん。相撲界の中では神様的な存在になることが出来ます。
当然大相撲全力士の代表である為、その責任は重大であります。実力だけではなく品格が求められるようになり、その品格とは普段の行いは当然ながら、相撲の取り口にまで注文が投げられる事もしばしばあります。
また神事としての大相撲の習わしより横綱は神様に一番近い所に居るものとされているため、本場所中は土俵入りも必ずやらなくてはならず本場所を休場すること自体も大きなニュースになったり、責任問題にもつながって行ってしまいます。
本場所は常に優勝もしくは準優勝していなくてはならず、「結果を求められ、品格を求められ、取り口にまで注文が入る」とても大変な存在ですよね。
スポーツという観点からすると勝つことだけを考えていれば良いのでしょうが、それに文化や神事と言う物も背負わなくてはならない。
その責任を果たせないときは引退するしかないと言う究極な立場となっています。
そこが他のスポーツとは違う、大相撲ならではの姿ですね。
※注記
※注1【新弟子検査】義務教育を修了した男子で、所定の身長・体重の基準(*)を満たし、一般は23歳未満、指定のアマチュア大会で一定の成績を残した人については25歳未満。
*身長・体重の基準(平成27年5月末日現在)
・身長167センチ以上
・体重67キロ以上
ただし、三月場所新弟子検査受検者で、中学校卒業見込者に限り
・身長165センチ以上
・体重65キロ以上
及び内臓検査等の健康診断が必要です。
※注2【前相撲】本場所の3日目から8日目取組を開始し、3勝勝ち抜けで出世します。昔はこの前相撲で所定の勝ち数を上げなければ序ノ口に出世できませんでしたが現在は仮に1勝も出来なくても前相撲で相撲を取れば翌場所は序ノ口に出世することが出来ます。
※注3【付け出し資格】学生横綱等、所定のアマチュア大会で一定の成績を収めると前相撲が免除されます。その成績によって初土俵から幕下や三段目からスタートをすることが出来ます。